●裁判所の判決
いわゆる承諾前死亡の事案につき、一定の場合に信義則上の承諾義務の存在を肯定するにしても、それが認められるのは“保険会社に危険選択の機会を与えたとしても当然に承諾がなされるべき事案であること、すなわち被保険者となるべき者が死亡したこと以外に、何ら承諾を拒絶すべき合理的な理由が存在しないことを立証する必要があるが、今回申込みに際して同人が約1年前に胃潰瘍と診断され、治療を受けていた事実を保険会社が知っていれば、そのままの条件では承諾しなかったと考えられる”として、被告の訴えを棄却した。(新潟地方裁判所第1民事部 平成7年6月5日判決)
●争点に対する判断
「本件の争点は、本件保険契約につき、被告(生命保険会社)に信義則上の承諾義務が認められるかどうかであるが、被保険者(となるべきであった者)は、保険契約申込の約1年前に胃潰瘍で治療を受けた事実を告知していなかったが、保険会社がこの事実を知っていれば、そのままの契約条件では承諾しないと言うことが十分に考えられるのであるから、、本件が、当然に承諾のなされるべき事案であるとは到底言えない」として、原告(遺族)の訴えを斥けた。
●hossieのワンポイント
原告(遺族)は、「胃潰瘍が死に至る可能性がほとんどない病気であるから、これを告知しなかったからと言って『重要な事実』についての告知義務違反があるとは言えず、保険会社は承諾を拒絶することは出来ない」と主張しました。
確かに結果論で見れば因果関係のない理由による死亡ですが、そもそもきちんとした告知がなされていれば当然に契約を承諾したとは思えないケースであったことから、裁判所は原告の訴えを棄却したものです。 |
|