●裁判所の判決
「自損事故が起きる前に既契約につき虚偽の申告をして15件の保険及び共済に加入した」「事故の収入と比べ高額の保険料を負担した」「不必要な入院を繰り返していた」という事実は認められるが、加入から事故発生までに相当の期間が経過しており、控訴人(保険契約者兼被保険者)が当初から保険金詐取(さしゅ)の意図を秘し保険契約を締結したものとは断ずることは出来ないとして、原審の詐欺無効の判断が覆されると同時に、契約締結が公序良俗違反にも当らないとされた事例。(広島高等裁判所岡山支部第1部 平成7年9月29日判決)
●争点に対する判断
「保険契約者兼被保険者が保険契約に加入してから保険事故発生までに相当の年月が経過しており、その間に支払った保険料が数百万円に及んでいること、入院当時の状況から果たして必要な入院であったかどうか疑問の余地は残るものの、控訴人の作為の入る余地のない内科的病名がつけられており、入院が詐病によるものであったとことを認めるに足る証拠は無い」として生命保険各社に入院給付金の支払いを命じた。
●hossieのワンポイント
生命保険会社に疾病入院給付金の支払いを命じる一方で裁判所は、「最初の入院の原因となった自損事故については、偽装であることが推認されるとして、既に支払われた入院給付金のうち同事故によるものは不当利得にあたり返還を要する」との判断をしています。事故入院・疾病入院ともにグレーな印象のぬぐえない事例でしたが、裁判では控訴人(保険契約者兼被保険者)が勝訴した形となりました。 |
|